こそだてドクターのおはなし
【気管軟化症】赤ちゃんの呼吸の個性|こどもの病気とホームケア
公開日:2026/03/31

監修:小児一般、小児救急・野田 慶太先生
気管軟化症ってどんな病気?
気管は、口や鼻から吸い込んだ空気を肺へ送る、大切な空気の通り道です。筒状の形を保つために、C字型をした軟骨がいくつも並んで補強しています。
気管軟化症とは、この気管の軟骨が生まれつき弱かったり、未熟だったりするために、気管の壁が形を保てずに柔らかくなってしまう病気です。
『息を吐くときに気管が潰れる』
健康な人でも、咳をしたり、息を強く吐いたりする時は、気管に圧力がかかります。しかし、気管軟化症のお子さんの場合、この柔らかい気管が息を吐くときや咳をするときに、内側にペシャンと潰れて空気の通り道が狭くなってしまうのです。
この時に「ゼロゼロ」「ゼーゼー」といった痰が絡んだような呼吸音が聞こえます。
どんな症状があるの?
気管軟化症の症状は、気管の柔らかさの程度によってさまざまです。
『ゼロゼロ、ゼーゼーという呼吸音(喘鳴)』
喉頭軟化症が「息を吸うとき」に音が強くなるのに対し、気管軟化症は「息を吐くとき」や「咳をするとき」に音が強くなるのが特徴です。
多くの場合、痰が絡んでいるような湿った音に聞こえます。
『長引く咳・繰り返す呼吸器感染症』
気管が潰れることで、痰をうまく外に出すことができず、咳が長引いたり、風邪をひくと重症化しやすくなったりします。
『体勢や刺激で症状が悪化』
泣いたり、興奮したり、哺乳したりする時に、症状が悪化しやすい傾向があります。
『重症のサイン』
まれに、気管の潰れ方がひどくチアノーゼ(顔色や唇が紫色になること)や、気管が潰れて呼吸困難に陥り、窒息して死に至る危険性のある発作的な状態(dying spell/ダイイング・スペル)を起こすことがあります。
治療と日常生活で大切なこと
『成長とともに良くなることが多い』
気管軟化症は、気管軟骨が成長とともに硬くなることで、多くは自然に改善していきます。
特に軽症の場合は、特別な治療は必要なく、経過観察が中心になります。
『日常生活でできること』
感染予防:風邪などの呼吸器感染症は、症状を悪化させる大きな原因です。手洗いやうがいを徹底し、人混みを避けるなど、予防に努めましょう。
体勢の工夫:呼吸が苦しそうなときは、少し体を起こした状態(半坐位)にしたり、抱っこしてあげたりすると楽になることがあります。
タバコの煙は厳禁:受動喫煙は、気道の炎症を悪化させ、症状をひどくします。ご家庭内はもちろん、周りの環境からもタバコの煙をできる限り避けることが必要です。
医師との連携:咳や喘鳴が悪化したとき、発熱したときなど、普段の様子と違う変化があったら、すぐに主治医に相談することが大切です。
『重症の場合の治療』
呼吸困難や、繰り返す呼吸器感染などで生活に大きな支障がある場合は、以下のような治療を検討することがあります。
・呼吸の補助:人工呼吸器などを使って、気管が潰れないように圧力をかけてあげる治療を行うことがあります。
・手術:気管の外側から支えるステント(チューブ状の器具)を入れる、または気管を支える手術など、専門的な治療が必要になる場合もあります。
最後に
気管軟化症は、赤ちゃんの呼吸の「個性」のようなものです。病気ときくと心配になりますが、多くの場合は成長を見守ることで解決します。
「うちの子の咳はいつもと違うな」「風邪が治ってもゼロゼロが続くな」と感じたら、まずは小児科にご相談ください。